剣道豆知識

剣道の袴の畳み方を解説!紐の結び方や美しいひだを保つコツも紹介!

稽古が終わって一息ついた後、あるいは洗濯をして乾いた袴を前にして、「あれ、この紐はどうやって処理するんだっけ?」と手が止まってしまうことはありませんか。

剣道の袴は、単なる衣服ではなく、剣士としての品格を表す重要な道具です。しかし、その構造は複雑で、正しく畳まなければ美しい「ひだ(襞)」はすぐに崩れてしまいます。

この記事では、武道具専門店として多くの剣士の道具を見守ってきた栄光武道具の視点から、初心者の方でも迷わずにできる「正しい袴の畳み方」を解説します。

特に悩みが多い「紐の結び方」についても、ほどけにくく美しい処理の仕方を詳しくご紹介します。

なぜ剣道では「袴を畳むこと」が重要なのか?

剣道において、「家に帰るまでが稽古」と言われるのと同様に、「袴を畳んでしまうまでが稽古」です。

面倒に感じるかもしれませんが、毎回丁寧に畳むことには、単なる整理整頓以上の深い意味があります。まずはその重要性について改めて考えてみましょう。

道具を大切にする心と残心の表れ

剣道では「残心(ざんしん)」という言葉がよく使われますが、これは打突の後だけでなく、道具の扱いにも通じます。使い終わった道具を丁寧に手入れし、感謝を込めて畳む行為は、自分自身の心を整える時間でもあります。

ぐちゃぐちゃに丸めて防具袋に押し込む人と、ひだの一本一本を丁寧に整えて仕舞う人とでは、剣道に対する向き合い方に大きな差が生まれます。

道具を大切にする人は、自分の技や身体も大切にするため、結果として上達が早くなると言われています。袴をきれいに畳むことは、技術向上のためのメンタルトレーニングの一つと言えるでしょう。

次回の着装を美しくするための準備

実用的な面でも、正しい畳み方は不可欠です。袴の命とも言える「ひだ」は、正しく折り畳んで保管することで、プレスされたような美しい状態を保つことができます。

逆に、適当に畳んでしまうと、変な場所に折り目がつき、着装した際にシルエットが崩れてしまいます。「折り目正しい」という言葉があるように、ピシッと整った袴を着ている剣士は、それだけで強く、格式高く見えます。

次回の稽古で自信を持って相手と対峙するためにも、畳むという行為は「次の勝利への準備」であると捉えてください。

【関連記事】剣道袴のサイズ選びで迷わない!身長別の早見表と正しい測り方を解説 – 拳拳服膺

初心者でも失敗しない袴の畳み方【基本の手順】

それでは、具体的な畳み方の手順を解説していきます。

まずは紐のことは一旦忘れて、袴の本体部分をきれいに板状にするところから始めましょう。フローリングや畳の上など、平らで広い場所で行うのがポイントです。

後ろ身頃を整えてベースを作る

最初に、袴の「後ろ側」を床面に向けて広げます。腰板(こしいた)がある方が後ろなので、腰板を下にして置くことになります。この時、袴の内側にある縫い目やひだをしっかりと伸ばし、シワがない状態にします。

次に、袴の両端を内側に折り込みます。剣道の袴は裾が広がっている台形のような形をしていますが、この工程で長方形になるように整えます。左右の端を折り込む幅は、腰板の幅に合わせるのが目安です。

こうすることで、後で三つ折りにした時に全体のバランスが崩れにくくなります。ベースとなる後ろ身頃が歪んでいると、全ての工程に影響するため、ここは慎重に行いましょう。

前身頃のひだをきれいに重ねるコツ

後ろ身頃が整ったら、その上に「前身頃(前側の布)」を被せます。ここが最重要ポイントで、前身頃にある5本のひだをきれいに整列させる必要があります。

まずは中心のひだを真っ直ぐに通し、そこから左右のひだを順番に整えていきます。

洗濯後などでひだが分かりにくい場合は、裾の方を持って軽く引っ張りながら、上から手アイロンをかけるように撫で下ろすと良いでしょう。ひだ同士の間隔が均等になり、裾のラインが揃っていることを確認してください。

もしシワが寄っている場合は、一度持ち上げて空気を含ませ、再度置き直すとスムーズに整います。

全体を三つ折りにまとめて整える

前後の身頃とひだがきれいに整ったら、袴全体をコンパクトに折っていきます。基本的には「三つ折り」にします。まず、裾(足元の方)を持って、袴の長さの3分の1程度を目安に上に折り上げます。続いて、さらにその上からもう一度折り上げ、腰板の下に裾が収まるようにします。

この時、折り上げた部分が厚くなって崩れやすいため、手でしっかりと押さえて空気を抜きましょう。最終的に、腰板を頂点とした四角い形になれば成功です。この状態が、次のステップである「紐結び」の土台となります。

最も悩みが多い「袴紐」の美しい結び方

袴を畳む際に多くの人がつまずくのが、長く伸びた4本の紐の処理です。適当に結ぶと解けてしまったり、団子状になってかさばったりします。

ここでは、見た目が美しく、かつ解けにくい伝統的な「十文字」の結び方を紹介します。

長い紐をコンパクトに束ねる方法

まずは、4本の紐(前の長い紐2本、後ろの短い紐2本)をきれいに伸ばします。そして、袴本体からはみ出さないように、紐を折り畳んでいきます。一般的には、長い紐(前紐)を最初に処理します。

前紐を四つ折りにするイメージで、袴の幅に合わせて折り畳み、袴の中心部分(腰板の上あたり)に置きます。この時、紐がねじれないように注意してください。

次に、短い紐(後ろ紐)をその上から交差させるように持ってきます。紐を束ねる位置は、腰板の中央付近にすると、最後の結び目がきれいに収まります。

ほどけにくく美しい「十文字」の作り方

仕上げに、折り畳んだ紐がバラバラにならないよう、結び目を作って固定します。

1.まず、折り畳んで置いた長い前紐の上から、右側の短い後ろ紐を被せ、下からくぐらせて全体を強く縛ります。これで紐の束が固定されます。

2.次に、左側の後ろ紐を、右側へ向かって折り返します。これが十文字の「横の線」になります。

3.最初に縛った右側の紐を、下から上へ持ち上げ、先ほど作った横の紐の上から被せます。そして、結び目の隙間に通して引き締めます。これが十文字の「縦の線」になります。

文章だと複雑に感じますが、要は「プレゼントのリボンを結ぶ要領」に近く、縦と横に紐を通して漢字の「十」の形になるように整える作業です。これができると、持ち運んでも紐が解けず、見た目も非常に美しくなります。慣れるまでは動画などを参考にしながら、指先の感覚で覚えていくと良いでしょう。

袴の型崩れを防ぐ保管方法と持ち運びのコツ

きれいに畳んで紐を結んだとしても、その後の扱いが悪ければ努力は水の泡です。

最後に、袴を長持ちさせるための保管方法と、道場への持ち運び方について解説します。

湿気を避けた保管と防虫対策

袴、特に綿袴(藍染め)は湿気を嫌います。稽古直後の汗を含んだ袴をすぐに畳んでしまうと、カビや悪臭の原因になります。まずはハンガーにかけて陰干しし、湿気を完全に飛ばしてから畳むようにしましょう。

保管する際は、直射日光を避けた風通しの良い場所が最適です。タンスにしまう場合は、防虫剤を一緒に入れることをお忘れなく。テトロン(化学繊維)の袴は虫食いの心配は少ないですが、綿袴は虫の好物ですので注意が必要です。

また、上に重いものを乗せると、せっかく整えたひだが潰れて折り目が消えてしまうため、袴は一番上に置くか、立てて収納することをおすすめします。

防具袋へ入れる際の配置と詰め方

道場へ行く際の防具袋への入れ方にもコツがあります。基本的には、剣道着を畳んだ上に袴を乗せ、その上に防具を乗せるという順番は避けてください。重い防具の下敷きになると、移動中に袴が圧迫され、シワの原因になります。

おすすめは、防具袋の底に面や胴などの防具を配置し、その隙間や一番上のスペースに袴を入れる方法です。あるいは、袴と剣道着をセットにして風呂敷で包むと、型崩れを防ぎつつ、出し入れもスマートに行えます。最近では袴専用の薄型ケースなども販売されていますので、どうしても崩したくない場合は活用するのも一つの手です。

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まとめ

この記事では、剣道の袴を正しく畳む方法と、その精神的・実用的な意味について解説しました。

  • 袴を丁寧に畳むことは、道具を大切にする心と残心の表れである。
  • 後ろ身頃を整えてから前身頃の5本のひだを丁寧に揃え、三つ折りにする。
  • 袴紐は四つ折りにして束ね、十文字に結ぶことで解けにくく美しく仕上がる。
  • 稽古後は陰干しで湿気を飛ばし、風通しの良い場所で保管する。
  • 防具袋では袴を上部や隙間に配置し、重い防具の下敷きにしない。

正しい畳み方を習慣にして、次回の稽古でも凛とした姿で道場に立ちましょう。

日々のお手入れと合わせて、品質の良い袴を選ぶことも重要です。栄光武道具では、ジャージ袴から伝統的な藍染袴まで、豊富な種類を取り揃えております。

初心者の方からベテランの方まで、用途に合わせた袴の商品ラインナップはこちらからご覧ください。

監修者 間所義明の顔写真
監修者
間所義明

取締役

埼玉県出身。 剣道歴40年以上、指導歴25年の実績を持つ剣道教士七段。
1999年に株式会社栄光武道具に入社し、現在は代表取締役社長を務める。経営者として武道具の普及に尽力する傍ら、桜南剣友会会長、越谷市剣道連盟常任理事、全日本武道具協同組合理事などの要職を歴任。
長年の競技経験と指導実績、そして武道具の専門知識を活かし、剣道の技術向上と文化継承のための情報発信を行っている。