剣道豆知識

剣道の面型で差がつく!初心者でもできる格好良い型付けの全手順

剣道は、単に竹刀で相手を打つだけでなく、その立ち振る舞いや着装の美しさも重視される武道です。特に「面型」は、その人の剣道に対する姿勢や風格を表す鏡とも言えるでしょう。

しかし、新しい面を購入した際や、自分の面の形がどうも格好悪いと感じている方にとって、理想の面型をどう作れば良いのかは悩みの種です。

この記事では、初心者の方でも実践できる格好良い面型の作り方から、その形を美しく保つための秘訣まで、順を追って詳しく解説します。

格好良い面型とは?

剣道家の間で理想とされる面型に「富士山型」があります。この名前の通り、富士山の裾野のように美しく広がる形状が特徴です。

なぜこの形が理想とされるのか、そして避けるべき「タコ面」との違いは何かを理解することが、格好良い面型を作る第一歩です。

富士山型が理想とされる

富士山型とは、面を正面から見たときに、面垂れが肩に沿って自然に、かつ斜め前に向かって緩やかに広がっている状態を指します。この形状は、見た目のバランスが美しく、安定感と威厳を感じさせます。

また、面垂れが肩をしっかりと覆うため、防具としての保護機能も十分に果たします。構えた際には腕の動きを妨げず、それでいて隙のない構えを演出できる、まさに機能美を体現した形と言えるでしょう。

やってはいけない「タコ面」との違い

格好良い面型を目指す上で避けたいのが「タコ面」です。これは、面垂れが左右に水平に大きく開いてしまったり、跳ね上がってしまっている状態を指します。突き垂れと面垂れの間に大きな隙間ができてしまい、だらしなく、弱そうな印象を与えてしまいます。

タコ面の主な原因は、面紐を首元に近い低い位置で結んでしまうことや、保管方法が不適切なことです。

【3ステップ】面型の付け方

新品の硬い面でも、日々の少しの工夫で理想の形に育てていくことができます。

ここでは、無理なく自然で格好良い面型を作るための基本的な3つのステップを紹介します。特別な道具は必要なく、誰でも今日から実践できる方法です。

ステップ  内容  ポイント 
1.ほぐす 稽古で使いながら、面布団全体を優しく揉みほぐし、少しずつ柔らかくする。 無理に曲げず、時間をかけて自分の頭の形に馴染ませることが重要です。
2.縛る 面紐を物見(目の位置)の真後ろで結び、面垂れの形を整えて固定する。 首元で結ばず、後頭部の正しい位置で結ぶことで「タコ面」を防ぎます。
3.置く 床に置く際に、面布団の左右の端が少し浮くように置き、自然な角度をつける。 面垂れの上に小手を置くなどして、型が定着するようにします。

ステップ1:面をほぐして馴染ませる

新しい面は、製造工程で使用される糊(のり)によって全体が硬くなっています。まずはこの硬さを取り、自分の頭や顔の形に馴染ませることがスタート地点です。

最も効果的な方法は、稽古で実際に使いながら、汗と体の熱で自然に柔らかくしていくことです。稽古の前後や休憩中に、面布団の部分を優しく揉んだり、曲げたりして徐々にほぐしていきましょう。この時、無理な力を加えて急激に曲げようとすると、芯材を傷める原因になるため注意が必要です。時間をかけてゆっくりと「育てる」という意識を持つことが大切です。

ステップ2:面紐を使って形を固定する

面がある程度馴染んできたら、次は面紐を使って型を固定します。重要なのは、面紐を結ぶ位置です。面を装着した際の、物見(面金の目の部分)のちょうど真後ろ、後頭部の一番出っ張っている部分で結ぶのが正しい位置です。この位置で結ぶことで、面全体が安定し、面垂れが自然に前に垂れる形が作られます。

絶対にやってはいけないのが、首の付け根あたりで結ぶことです。これをすると面垂れが外側に引っ張られ、タコ面の直接的な原因となります。稽古後、面を外した状態でも、この正しい位置で面紐を結んでおくことで、型が崩れるのを防ぎます。

ステップ3:床に置いて形を整える

日々の保管方法も、美しい面型を形成する上で非常に重要です。稽古が終わって面を保管する際は、床に置く際の向きと角度に一工夫加えましょう。

面金が上、面垂れが床につくように置きます。この時、左右の面垂れの端(肩にかかるL字部分)が床にべったりと付くのではなく、少しだけ浮くようにタオルなどを挟んで調整します。これにより、面垂れが斜め前に落ちる自然な「富士山型」の癖がつきます。

さらに、その面垂れの上に小手を乗せておくことで、適度なおもりとなり、より効果的に型を定着させることができます。

面型を格好良く維持するためのポイント

一度美しい面型を作っても、日々の扱い方次第で簡単に崩れてしまいます。理想の形を長く維持するためには、稽古後の収納やメンテナンスが重要です。

ここでは、大切な面を最高の状態で保つための具体的な方法を紹介します。

稽古後の正しい収納方法

稽古で汗をかいた面を、そのまま防具袋に乱雑に入れてしまうのは型崩れの最大の原因です。まず、稽古後は内輪(顔が当たる部分)の汗を乾いたタオルでしっかりと拭き取ります。その後、防具袋にしまう際は、面を一番上に置き、胴や垂れの重みで潰されないように注意してください。

特に、突き垂れ(喉を守る部分)が折れ曲がらないように気をつけることが大切です。可能であれば、面の中に丸めたタオルや専用の型付けサポーターを入れておくと、内部の通気性を確保しつつ、型崩れを効果的に防ぐことができます。

日常でできるメンテナンスのコツ

面を長持ちさせ、美しい型を維持するためには、湿気対策が欠かせません。帰宅後は、必ず面を防具袋から取り出し、直射日光の当たらない風通しの良い場所で陰干ししてください。これにより、汗による湿気を飛ばし、カビや臭いの発生を防ぎます。

また、定期的に内輪や面布団を固く絞った布で拭き、清潔に保つことも重要です。日々の少しの手間が、面の寿命を延ばし、いつでも気持ちよく使える状態を保ちます。

型崩れを防ぐための注意点

面型の崩れは、稽古中や保管時だけでなく、移動中にも起こり得ます。遠征などで防具を持ち運ぶ際は、防具袋の中で面が他の防具とぶつかって圧迫されないよう、タオルで包むなどの工夫をすると良いでしょう。

また、一度付いた癖を修正するのは難しいため、最初から「タコ面」にならないよう、面紐の結び方や置き方には常に注意を払う習慣をつけることが肝心です。

面型に関するよくある質問

ここでは、面型に関して多くの方が抱く疑問についてお答えします。

正しい知識を身につけ、より効果的に理想の面型を目指しましょう。

新品の面はどのくらいで馴染みますか?

新品の面が自分の体に完全に馴染むまでには、ある程度の時間が必要です。使用頻度や面の材質にもよりますが、一般的に週2~3回の稽古で使用した場合、1ヶ月から2ヶ月ほどで徐々に硬さが取れ、型が付きやすくなってきます。

焦って無理な力を加えるのではなく、日々の稽古を通じてじっくりと馴染ませていくことが、最終的に最も自然で美しい型を作るための近道です。

面垂れをカットしても良いですか?

一部の選手の間で、見た目の軽快さを求めて面垂れを短くカットすることが流行した時期もありました。しかし、面垂れの本来の目的は、肩や上腕部を打突から保護することです。これを短くしすぎると、防具としての安全性が著しく低下し、怪我のリスクが高まります。

全日本剣道連盟も、安全性の観点から短い面垂れに対して注意を喚起しています。特別な理由がない限り、カットすることは推奨されません。

参考:竹刀及び剣道具等の安全性・公平性に関するパブリックコメントの結果について | 全剣連のお知らせ | 全日本剣道連盟 AJKF

洗濯のり(キーピング)を使うのは効果がありますか?

どうしても型が付きにくい場合に、洗濯のり(キーピングなど)を面布団にスプレーして形を固める、という裏技的な方法が存在します。確かに一時的な効果は期待できますが、デメリットも理解しておく必要があります。スプレーによるベタつきや臭いが残ることがあり、汗や湿気ですぐに効果が薄れてしまいます。

また、頻繁な使用は生地を硬化させ、劣化を早める可能性も否定できません。あくまで応急処置的な方法として捉え、使用する際は目立たない部分で試してからにしましょう。

まとめ

剣道の面型は、単なる見た目の問題ではなく、その人の剣道への姿勢、品格、そして機能性や安全性にも関わる重要な要素です。格好良い面型は一朝一夕に出来上がるものではなく、日々の稽古と丁寧な手入れの積み重ねによって育まれていきます。

本記事で紹介した「富士山型」を目指し、正しい型付けと維持のポイントを実践することで、あなたの立ち姿はきっと変わるはずです。この記事が、あなたの剣道ライフをより豊かにするための一助となれば幸いです。

また、理想の面型を実現するには、自分の頭部にフィットする高品質な面選びが欠かせません。栄光武道具では、内輪の形状や布団の柔軟性、顎部分の仕立てにこだわった防具を豊富にご用意しています。

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監修者 間所義明の顔写真
監修者
間所義明

取締役

埼玉県出身。 剣道歴40年以上、指導歴25年の実績を持つ剣道教士七段。
1999年に株式会社栄光武道具に入社し、現在は代表取締役社長を務める。経営者として武道具の普及に尽力する傍ら、桜南剣友会会長、越谷市剣道連盟常任理事、全日本武道具協同組合理事などの要職を歴任。
長年の競技経験と指導実績、そして武道具の専門知識を活かし、剣道の技術向上と文化継承のための情報発信を行っている。