袴の番手
袴生地の番手は、1インチ角(約2.54cm角)への木綿糸の打ち込み数を指します。
打ち込み数が5000であれば5000番、8000であれば8000番、10000であれば10000番とされます。
ざっくり特徴をいうと、
番手が低いと軽くて柔らかい生地になります。
その反面番手が高い生地に比べてヒダが消えやすかったり、生地自体の強度は落ちます。
番手が高くなると重くなりますがヒダが消えにくく長く使える強い生地となります。
新しいうちは若干ごわつく感はありますが、使っていくほどに柔らかくなっていきます。
個人的に履いた感覚で言うと重さはそんなに感じませんが、番手の低い方が柔らかいとは感じます。
自分はピシッーとした折り目が好きなので番手が高い方が好きです。たたみやすいですし…
ただし防具の刺し目の大きさと同じで、番手も数字だけで一概にはいえません。
なぜならその糸の種類や染めで全然違ってくるからです。
特に糸は職人さんそれぞれのこだわりがあります。
糸は2本の糸を撚(よ)って1本にしてある物を「双糸」と言い、元々の1本の物を「単糸」と言います。
双糸は2本の糸をねじり合わせるため単糸のものに比べて手間がかかるため当然コスト高になります。
通常反物を作る際、縦糸は双糸を使い横糸は単糸を使用する所が多いようです。
横糸を単糸で作ってある反物と縦横どちらも双糸で作ってある反物では出来上がりは違ってきます。
また染めも糸の段階で染めた「先染め」と生地になってから染める「後染め」でも風合いが変わってきます。
栄光武道具では数社ある伝統工芸の武州工場のなかでも竹村産業さんの衣類を主に扱っています。
竹村さんの糸へのこだわりは半端じゃありません!!!
一言で双糸と言いましたが、多くある糸から選び抜いた糸を使用しているとの事です。
ブログでは書ききれませんが、聞けば聞くほど奥が深くて頭が下がります。
竹村さんはもともと防具用の反物と衣類用の反物に分けて作っていたとの事ですが、
今は防具に作った強い高級な反物を袴にも使っています。
そのため本当に丈夫な袴で長く使ってもほとんどへたりません。
逆に武州染め以外の会社はウォッシュ加工技術に力を入れていたり、
生産性がものすごい高かったりコストパフォーマンスが良かったりとそれぞれ良いところは色々です。
現在栄光武道具で扱っている定番の綿袴は、
その辺それぞれの点において優れている商品を選んで扱っているつもりです。
それに関しては今日のテーマではないので後日!ということで…
冒頭で番手によって重さが変わると言いましたがこの反物の番手、
昔は「貫目」つまり重さで表記していたのです。
具体的には百反で何貫あるか?ということです。
この貫目については番手に比べて曖昧というかそれぞれだったようで
公式でこうというのはなかった(自分の勉強不足かもしれませんが)ようなので、
自分の個人的な考えと思って読んでください。
20貫が5000番前後・30貫が7500番前後・40貫が10000番前後
袴の生地の表記が貫目の場合は250ぐらいを掛けてもらえると目安になると思っています。
ただ実際は同じ20貫や30貫でも会社によって反物の巾が違ったりしたようですし、
30貫をそのまま3000番と表記している職人さんいますので参考程度に考えて下さいm(_ _)m
また違う話しですが、袴の話題なので以前もブログに書いた袴サイズについて。
袴のサイズって25号とか26号ってありますが
あれは正式にはそのまま長さの表記で、25号は2尺5寸という事です。
ただし寸法は着物などを作る際に使う「鯨尺」という寸法を使っています。「鯨尺」の1寸は3.8㎝です。
袴の長さを計る位置は前の帯下から裾まで(帯は含まないという事デス)
25号は25×3.8で95㎝。26号は26×3.8で98.8㎝となります。
番手同様メーカーによって異なる事もありますが、基本はそのような決まりです。
ちなみに先ほどの反物も1尺幅は38㎝です。
「鯨尺ってどうして鯨なの?」と思う方もいらっしゃる方もいるでしょう?
それは着物を仕立てるのにしなやかな物差しを鯨のヒゲで作ったかららしいです。